第5回 読書マラソンコメント大賞
銀 賞
金 賞

銀 賞
優秀作発表!
銅賞
鳥居 美希さん
東京外国語大学4年)

ぼくのメジャースプーン

辻村深月/講談社文庫
本体
【レビュー】
もし、自分の大切な人が心ない第三者の遊びによって不当に傷つけられ、その心が破壊されてしまったら、その犯人には一体どのような罰がふさわしいのだろう。
読んでいる間中、私はその答えを探し求めた。小学4年生という子供の視点から描かれているにもかかわらず、この小説が向き合うテーマは大人にとっても投げ出したくなるほどへヴィだ。
しかしだからこそ、この本を開いたら逃げ出さずにこの問題と最後まで向き合う必要がある。
苦しんで悩んで、彼と一緒に犯人の罪の重さとそれに対する罰を自分自身のメジャースプーンできっちりと測り切るべきなのだ。そしてすでに大人である自分だからこそ純粋な子供の出す残酷で甘い答えをしっかり噛み締め、一生覚えておきたいと思った。

銅賞
浅沼 大祐さん
帯広畜産大学4年


キッチン

よしもとばなな 新潮文庫
本体

【レビュー】
台所は生と死の交じわるところだと思う。生あるものの命をつなげていく場所だと思う。だからこそキッチンは他の場所とは違う独特な空気を持っている。人はその場所で創り出される料理で孤独を忘れ時に笑い時に涙する。
この小説もキッチンのように大切なものとの決別、出会いを描く。そこから伝わる人間模様に私達は共感しやはり涙する。
一番大切な場所、一番大切なもの。それは人によって違うだろう。しかし、大切なものは時を変え形を変えきっといつでも傍にいる。そんな風に寄り添える大きくて小さいもの、それがこの本だ。

銅賞
大寺 宇織さん
東京農工大学修士2年

太陽の塔

森見登美彦 新潮文庫
本体

【レビュー】

失恋すると読む本読む本面白くて仕方がない。そういう経験ってない?あれって何なんだろ。テンションのせいかなぁ。そういう時に読んだのよ。これ。取りわけ、いっとう面白かったね。
脳みそ鷲掴みされて、ぶん回されてくすぐられて1ページに2回は笑っちゃったよ。恋も失恋もさ必死じゃない。みっともなくって楽しくって痛々しくって滑稽でしょうがない。完全に自分だけのものなのにそのぐっちゃぐっちゃが可笑しな小理屈こねて生真面目に活字になってるわけ。ね?ちょっと経ってからも何度も読み返したよ。何度でも面白かった。こればっかりはテンションの錯覚じゃあ無かった。読み零しはいくらでも出てくるし読む度にくすくす笑わせられちゃう。笑えない時や、泣けてくる。どうしようもなくいい本だよ。あぁ失恋でもいいから恋してえなぁ!

奨励賞
赤星 鮎美さん
慶応義塾大学3年

本当はちがうんだ日記

種村弘 集英社文庫
本体

【レビュー】
どうしよう。こんなにかっこ悪くて情けなくてみみっちいのは自分だけ?って思っていた気持ちが笑いとともに吐き出されていく。
全てをわかるわけではないけれど、読み進めていくうちに著者のネガティブなポジティブさに毒され、肩の力がぬけていった。
本当はこんなの違うんだ!と叫びながらでもちょっぴり自分を認めてあげたくなる。ひと息ついてまた頑張るかと思える、そんな一冊。
※自分に自信のある人は読まないように!
奨励賞
柴田 麻里奈さん
名古屋大学4年

魔王
 
 伊坂幸太郎 講談社文庫
 650円(本体619円+税)
9784062761420
             
【レビュー】
例えば、就職活動。この広い社会のどの部分に自分は貢献できるのか、真剣に考えた。そうすると、自分の無力さを感じざるを得なかった。例えば、選挙。この一票で何が変わるのか、日本政治はどうあるべきかを懸命に考えた。やはり、この一票では何も変わらないのではないか、という虚しさにおそわれた。そんな時この本を読んではっとした。「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて対決していけば」という兄と弟の信念に心を動かされたのだ。社会が変わるか変わらないかではなく重要なのは変えていこうとする強い意志なのではないだろうか。自分に向き合えた一冊だったと思う。


奨励賞
美濃 万里子さん
早稲田大学3年

新編日本の面影

ラフカディオ・ハーン 
角川ソフィア文庫
本体
【レビュー】
ようこそユートピア絵画展へ!本展ではあるおとぎの国の情景を描いた作品を集めました。
自由奔放な中に神秘性を秘め、人々と神々が対話し自然までもが親し気に語りかけてくる世界。
こんな場所が本当にあるの?と疑う人もいるかも知れません。あったんです。
そしてその延長線上に今私たちは立っています。これは約100年前の日本の姿なのですから。ここには今日の私たちが守るべき数多くの大切なものがあります。あなたは現代にいくつ、これらの美しい面影を見つけ出すことができるでしょうか?

・・・・…

奨励賞
高松 由依さん
立命館守山高校2年

二十億光年の孤独

谷川俊太郎 集英社文庫
本体

【レビュー】
「私の生命は1冊のノートだ。」と彼は言う。
そうだとしたら私は今、自分自身のノートにどのくらいの事を書き込むことができているのだろうか?
「昨日の奥の十億年、明日の奥の十億年。それらはせいぜい無限ほどの体積しかないのだ。」と彼は言う。
そうだとしたら私はその無限の大きさの物の中にどのくらいの存在価値を示せているのだろうか?ページを読み進めるたび考える私。そしてたどりついた答えが1つ。「過去、現在、そして未来に生きている私がいる。



奨励賞
広内 陽さん
立命館慶祥中学1年

夢をかなえるゾウ

水野 敬 飛鳥新社

【レビュー】
ガネーシャさん!私はあなたに会いたくなりました。本の中だけではなくて、あなたが本当に実在してくれたらと言う願望を持ち、私の前に現われてくれたら…と言う夢まで見てしまいました。
あなたの関西弁のお説教は私が今まで聞いたり読んだりした偉い偉い誰かさんのお話よりもずっとずっと心に響きました。ガネーシャさん!あんみつ冷やして待っています。


奨励賞
戸張 育子さん

大阪府立大学4年

朽ちていった命

NHK「東海村臨界事故」取材班 
新潮文庫
460円(本体438円+税)
9784101295510



【レビュー】
もはや「オススメ」というレベルの本ではありません。「被爆」「放射能」の驚異を手にとるように感じながら読む本だった。60余年前に広島・長崎で起こった出来事ではなく携帯電話、パソコンが普及し医療技術も進化していた10年前に起こった出来事です。ウラン溶液加工作業中に「チェレンコフの光」(臨界=核分裂が最高潮に達する現象)をまともに浴びた作業員がその後どのような状態をたどったのか。医療記録、スタッフの回想、家族の想いなど克明に綴られています。普通のサラリーマン作業員の体は放射線を浴びその後83日間かけてまさに「朽ちて」いった。核開発は日進月歩なのに「被爆」した命に対して先端医療の無力さ、核の驚異です。



奨励賞
久野 亜紗美さん
名古屋大学研究生

若者と貧困

湯浅誠、冨樫匡孝、上野陽子、
仁平典宏 明石書店
2,310円(本体2,200円+税)


【レビュー】
例えば悪意ある行為でなく「社会」のため〈善〉として揚げられた価値や行為が巡り巡って誰かを苦しめているとしたらとても悲しい事である。
本書は貧困や社会的排除という問いについて当事者、支援者、研究者がそれぞれの領域・方法で自己と他者その媒介となる「社会」を解きほぐしその課題と意味を再考/再興していくという民主主義の根源を体現する一冊であると言える。
これからの社会を生きる若者の役割は大きいがその一人としての私はとても小さく、常に葛藤し揺れる弱い存在である。しかしだからこそ自己と他者の交錯の中で〈善〉やそれに連なる「社会」のあり方を省みる事が出来ることもあると思う。このコメントの応募をまずその第一歩としたい。
堀内ゆうきさん (同志社4年)
書名 風に舞いあがるビニールシート
 著者 森絵都 文春文庫 本体570円


内容】
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。 解説・藤田香織

応募総数はなんと8753通!ハイレベルな作品に審査は難航

毎年恒例となった「第4回読書マラソンコメント大賞」の選考会が10月29日に行われ、8700通を超える応募作品のなかから優秀作品が決定されました。限られたスペースに凝縮された大学生の「いま」を入賞作品から感じとってください。

小宮山 昇平さん(早稲田大学3年)

書名 中原中也詩集
  「在りし日の歌」「山羊の歌
著者 中原中也 角川文庫

選評
詩をよむという経験が自分を変えたこと、心が動かされたことが涙となって現れた驚きが熱く語られている。詩のことばを体で感じる喜びがダイレクトに伝わる。
喜びの声
今回、受賞してうれしかったことは、友人が私以上に喜んでくれたこと。私がいいなと思った点を伝えることは、非常に難しいし、言葉足らずであったり、逆に言いすぎてしまうこともあります。それは、友人との会話と同じで、私の「書評」は、友人にいかに「面白そう!」と思ってもらえるか、に尽きるかも知れません。「頑張っている友人に喜んでもらう」ことを支えに、これからも本を読み、考え、書いていきたいと思います。
木村 渚 さん(東北学院大学3年)

書名 二十歳の原点 
著者 
高野悦子 新潮文庫
選評
情熱、絶望、孤独、あこがれ・・・同じ年代の者が読書を通じて心を通わせる、そんな奇跡的な出会いが切実な言葉でつづられている。読むことで生き続ける魂があるのだ。
喜びの声
物ごころつく前から私は本が大好きでした。それは今も変わっていません。本を読むだけで、私たちは過去にだって、外国にだって行くことができます。冒険家にだってなれるし、正義の味方にだってなれるんです。それって、とてもすごいことだと思います。私のこのちっぽけな思いが、こうしてかたちになったことをうれしく思います。「読書は楽しい」「読書はいとおしい」。そう感じてくれる人が一人でも増えてくれることを願っています。
【内容】
独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけた一女子大生の愛と死のノート。自ら命を絶った悲痛な魂の証言。


選評
作品から発見したメッセージを誰かにつたえたいという気持ちが強く感じられる。タイトルが意味するものを懸命になって自分の言葉にしている。手に取りたくなる力を持ったコメントだ。
喜びの声
子どものころ、自分の本棚にある本一冊一冊が私の宝物だった。買ってもらった日のこと、はじめて読む時の気持ち、くり返し読むたびに違う感想・・・。どの本を手にとっても、鮮明に思い出すことができた。あのころの何十倍もの本所有する今、本との思い出が、自分の中の本一冊の価値が、薄れてしまったような気がする。受賞をきっかけに、一冊の本とじっくり向きあう幸せを思い出すことができました。